「普通のもの」はどこにでも売ってるはずなのに、「普通のものが欲しい」と思う。
私たちが「日常の制服」と呼ぶもの。それは一言でいうと「普通のもの」です。
以前にも書いたように、CONVERSEのALLSTARであり、Levi'sの501であり、Brooks Brothersのシャツであり、Porterのバッグ...
人の暮らしの中に溶けこみ、誰もが身につけているもの。性別や年齢を問わず、その名前を知らないひとにすら愛されつづけているもの。
「普通のもの」が「普通」となるまでには長い時間が必要とされます。
ひとつのものが世の中に「新しいもの」として生まれ、そのデザインや考えから多くのひとに支持され、
それから長い時間を経てようやくそれは「普通」と呼ばれるようになっていく。
買い物をしているときに、「普通のものが欲しい。」と思うことがあります。
「日常の制服」と呼べるような、よけいな装飾がなく、色の多すぎない、シンプルなもの。
街には普通のものがあふれているはずなのに、「普通のもの」を探していくつもお店を調べたり、まわったりすることも少なくない。
それがどうしてなのか、長い間疑問に思っていました。
それからファッションを仕事に始めると「普通のものは売れにくい」という意見を耳にすることが多くなりました。
普通のものは悪く言ってしまうと、特徴がないし他のものとの差別化しにくい。
それよりも、ひとことで話せるような特徴があったり、目にとまりやすい装飾や色づかいのあるものの方が売りやすいし買いやすい。
それは確かに間違っていないですし、ファッションビジネスに携わってきた私たちも同じくそう思います。
そのために「普通のもの」に少し手を加えることで、他社との違いや、ブランドらしさの演出を意識するのは当然のこと。
そうしてたくさんのブランドから毎シーズン途方ない数の服がつくられ消費されているサイクルの今、
「本当に普通のもの」というのは、逆に少なくなってきているのかも知れません。
だからこそ、私たちはいま「本当に普通のもの」が欲しいし、つくりたいと手を動かし続けています。
普通のものは売れにくい。
それでも、私たちが作りたいのは普通のものだから、「普通のもの」を「新しいかたちで見せる」方法で突き詰めていくことにしました。