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春夏と秋冬、ファッションブランドが年2回の発表にこだわる理由。

 

 

Itheはこれまで、多くのファッションブランドとおなじように春夏と秋冬、年2回の発表を続けています。

私たちの選ぶデザインは一時性の強いものではないので、シーズンにこだわらず1つの製品が完成した段階で発表をするということもできますし、

その方が日々ニュースとしてお知らせできることを増やせたり、1着1着に時間をかけて発信することもできます。

 

それでも私たちが年2回の発表にこだわる理由はただひとつ、私たちはファッションを扱うレーベルだからです。

 

「衣服を作り、販売する」という行為に限れば、ファッションの流れに沿う必要もありませんし、

実際そういったブランドは特に近年多く出てきています。

 

しかし、Itheはあくまでその流れに沿って提案をして、直接お売りするだけでなく小売店に卸すことも考え、

そのために地方をはじめ世界中からバイヤーの集まってくる期間に展示会で新作を発表します。

そして、それを継続していくのが今のファッション業界の内側からファッションの提案をすることだと考えています。

 

 

また、展示会で個人のお客さまに実際に服をお渡しする半年前に注文をしていただき、それまでの長い時間お待たせしてしまうこと。

それは今の時代のスピード感からすればありえないことだと、私たちも十分に感じています。

 

しかしそれも、その半年の間にサンプルとして1着製作したものから他のサイズ展開分の型紙を作り、

展示会の時に見つかった細かい微修正を繰り返し、工場や職人の方々と連絡をやりとりしながら、

皆さんにきちんと行き渡るだけの数を生産してお届けをするためにはどうしても時間がかかってしまうものです。

逆に言えば、本来たどるべき過程をカットしているからこそファストファッションがファストであり続けることができるのです。

 

ファッションが産業となって長い時間が経ちましたが、その仕組みが今になっても続くのはそれが完成された仕組みだから、という理由があります。

 

私たちはそれを知っているからこそ、ファッションを扱うレーベルとしてファッションの流れに乗り、

ファッションの仕組みやルールに沿って提案すること。その大切さを、それらを壊すことと同じくらい大切に考えています。

 

これまでの仕組みやルールを変えること、変えてやろうと動くことはもちろん素晴らしいことですが、既存のそれに乗ることで担保されることもあります。

 

むしろ、仕組みの中で動くからこそ新しかったり、仕組みを変えることにつながることすらあるものです。

 

Itheとしての地盤が固まって、自分たちで仕組みやルールを作れるようになれば発表のかたちを変えることはありえますが、

海辺で来るのかわからない波を待ち続けるのでなく、うまく今起きている波に乗りこなすこともまた意味のあることであると考えています。